視点

なぜこうもかぶるのか



船上で大宴会は赤髪のシャンクスの船なら毎度のこと。だからみんな慣れたもの……だけど。「さすがに5日連続はつかれるよ……」そう言いながら甲板の手すりに捕まって息を吐き出す。もうグッタリだ。


「よぉ、飲まないのか?」


そんな連日の宴にももろともせず、いつも通り調子のよい声で話しかけて来た人。すぐに誰か分かった。気だるい体をなんとか起こして声のする方へ顔を向けると赤い髪が風に靡いてさらさらと揺れていた。


「シャンクスさん。もうヘロヘロです〜〜」
「おいおい! 嘘はいかんな。まだまだ飲めるだろ?」


そう言って、「はいはい、ほらこれ持って」と杯を渡されたあと、遠慮なく注がれていく酒。もうシャンクスさんはいつも強引なんだから。それをすんなりと受け入れている私も私なんだけど。


「はい、かんぱ〜い!」


あぁ、もう……かなり酔ってるし。よくよく見てみると赤い髪に負けないぐらい彼の頬は真っ赤に染まっていて、呂律も少し怪しかった。


「はい、かんぱ―い…………」


コツン――、杯をぶつける。シャンクスさんはそれを一気に飲み干した。その様子を流し見ながらもうどうにでもな〜れ!と後に続いて一気に飲み干す。


「ぷはぁ〜!!」
「おぉ!さすが! いい飲みっぷりだな!」


ニシッと笑い返した直後、グラッと視界が揺れた。あぁ……やばいかも。なんか目の焦点が合わない。こんなになったの久しぶり。


「だけど…………今回はちょっときついかもしれないです」
「どうした? 珍しいな」
「さすがに5日連続はキツいものがありますよ」
「お前は初めてだったっけな?」
「えぇ、はい」
「まぁ、すぐに慣れるさ」
「…………別に慣れたくはないんですけど」
「あぁ?」
「いえ、なんでもないです」


船縁に寄りかかってふらつく体を落ち着ける。目を閉じるとザブン、ザブンと船体に波が当たる音が聞こえた。波の音は落ち着くからすごく好き。ほわんほわんとほろ酔いで心地よい感覚と相まってなんだがとても気分が良かった。

酔いの波をみてゆっくりと目を開く。顔を上げてなんとなく夜空を仰ぎ見た。あぁ、今日は雲がないや。目に映ったのは星空。


「…………すっごく綺麗」
「…………ん?」


珍しく静かに酒を煽っていたシャンクスさんがつられて顔を上げて、ふらりふらりと隣に並んだ。ねぇ、ほら見て下さいよ、そう言って上を見るように促した。彼は私と目を合わせた後、両肘を船縁に置いて同じように空を見上げた。


「あぁ、……ほんとだな」


その時、強い風がビュュュン――と通り抜けた。それを受けた帆がパンッと張り、船がガクンと揺れる。


「わっ」
「おっと…………」


左右に揺れる船体に体勢を崩して船縁に掴まる暇もなく体が放り出される。やばいと手を伸ばしたとき、手を掴まれてグンッと体が引っ張られた。「大丈夫か?」と声が聞こえて目を開く。ふんわりと香るのはお酒と…………シャンクスさんの香りだ。心臓の音がトクントクンと聞こえた。一度頷くと、「危なっかしい」と言いながら、優しく頭を撫でられた。

ゆるゆると顔を上げるとすぐ傍にいるシャンクスさんと目が合って、なんだか気恥ずかしくて、視線を泳がせながら何度か瞬いた。「ありがとうございます」そう言って、シャンクスさんの胸を軽く押して体を離そうとした。


「ん、…………シャンクスさん?」


ビクとも動かないシャンクスさんに眉を寄せる。首を傾げながら見上げると、シャンクスさんがにっこりと笑っていた。


「あの、シャンクスさん?」
「いいね、その顔」
「…………なに言ってんですか」


もう…………と少し頬を染めて、悪ふざけがすぎますと呆れ顔で振り解く。今度はすんなり解放された。


「相変わらずだな」
「……相変わらず?」
「いや、なんでもない。気にしないでくれ」


…………一体何が相変わらずなのか。「まったく、もう」そう言いながら手に握りしめていた杯を煽った。…………あ、そういえばさっき飲み干したんだっけ。空っぽになった杯を恨めしく見つめる。今日の甲板はいつもより強い風が吹いていて。暖まっていた体温もすぐに冷めていってしまう。もう体の芯が冷えてしまったのかもしれない。きっと、ずっと外で夜風に当たっていたせいだろう。顔はこんなにも熱いっていうのに。

酔いだってもう冷めてしまった。こういう時こそお酒が欲しいっていうのにさ。なんかシャンクスさんの様子もおかしいし。…………ほんと。…………ハァ――寒いな。寒さを誤魔化すようにして自身の両肩を摩った。


「どうした? 酔いが冷めたか?」


シャンクスさんが優しい声色で言った。「…………そうですねぇ」と目の前に広がる海を見ながら小さな声で返して、「でもこれぐらい全然平気ですよ」とシャンクスさんの方に向かってにっこりと笑って見せた。

一度こちらを見たシャンクスさんは視線を逸らしてはぁ〜と息を吐き出した。ほんのり白く染まって見える息に余計に寒さを感じる。

彼は目の前に広がる海を見つめていた。その凛々しい横顔を少しの間見つめて、彼に習うようにして私も海を見た。強い風の影響を受けてか、波が大きく揺れている。


「」


ん?と顔を向けた瞬間、すっぽりと体が覆われた。


「無理すんな」


な?と耳元で言う彼にはお見通しの様子。彼の真っ黒なコートの中はとても暖かくて、すっぽりと覆われた瞬間、体全体を覆う暖かな温もりに思わず頬が緩んだ。正直うれしかった。

でもそんなことしてもらうなんて申し訳ないと思ったから、首を横に振って「大丈夫ですから」と言ったけれども「好きでやってんだからいいの」と言って、シャンクスさんは離してくれなかった。


「あったかいだろ?」
「…………はい」


すごく暖かかった。その温もりも優しさも。すごく暖かかった。


「シャンクスさん……」
「なんだい?」
「酒臭いです」
「え”……。おいおい、傷つくだろが」
「臭いものは臭いんです」
「なんだと!」


ははっ、と小さく笑う。それと同時になんだか気恥ずかしかったから、そんなことを言ってみたりして。からかってみたりして。シャンクスさんは笑ってくれた。いつもみたいに素敵な笑顔で。

それからしばらく話をした。取り留めもない話をたくさんした。そうしたらここ数日の疲れがどっときてしまったみたいで。急に瞼が落ちてきた。眠気に襲われてかくんかくんと頭が上下する。それでもどうにか持ちこたえようと瞼を開いて頭を上げてと頑張っていたんだけれど。


「……? 眠いのか?」
「いえ、そんなことは」


…………ないです、首を横に振ると、シャンクスさんが頬に手を添えて優しく撫でてくれる。なんだかその行為がとても心地よくて、余計に眠気を誘われた。そのまどろみの中はとても心地よくてもうついに瞼が開かなくなってしまった。肩を引き寄せられてシャンクスさんの体にしっかりと支えられて、すごく安心した。


「いいから寝ろ」


その言葉を合図に体から力が抜けて、意識が薄れていく。どうにか搾り出した小さな返事の後に返っていた優しい笑い声を最後に意識を手放したのだった。




シャンクス視点



はすぐに眠りについた。が深い眠りについたことを確認した後、を抱えて部屋に運んで、ベットに寝かせて毛布をかける。ベット際のイスに腰掛けて、気持ちよさそうに眠っているの頬を撫でた。

俺のことを想わなくてもいい。ただ、この船でいつまでも笑ってくれていればいい。俺はそんなを大切にしたい。


「……愛してる」

(Plan:Christmas)
141222 End.
150216 修正
161225 修正
Afterword


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