「なぜこうもかぶるのか」続き
視点

つぼみの砂糖付け



夜は寒いけど嫌いじゃない。暗いけど怖くない。だって、毎夜毎夜開かれる宴のお陰で大抵みんなでバカ騒ぎしているから。アッハッハッなぁんてバカみたいな大声を上げて、ガッシャン、ガッシャンて物を壊しまくってそんなことをしても誰にも怒られない。


「おら、今壊した奴誰だ、出てぇ来い!」


……あ、訂正。ベックに怒られます。


ふふふ、ついついおかしくて笑ってしまう。甲板にいくつもの円陣が出来上がり、皆そこへ代わる代わる入ったり出たりを繰り返し、酒を酌み交わしていた。かく言う私も先ほどまですぐそこの円に入っていたのだけれども、少し休憩したくてこちらに出てきていた。ほぅと息を吐き出し満点の星空を見上げた。火照った体に当たる夜風がとても心地よかった。


「、」


円陣から離れるなんて珍しいですねぇ、と慣れ親しんだ声に笑いながら振り返る。真っ赤に染まっている顔でニカッと笑った赤い髪のその人が隣に並んだ。


「な―にしてんだァ」
「ちょっと休憩」
「なんだもう酔ったのか?」
「ふふふ、シャンクスも酔っているでしょ。違う、お腹のキャパがきたの。私みんなほどそんなに胃が大きくないから」
「はぁ? ついさっきホ―ルケ―キ丸々1個を1人で平らげた奴がよくもまぁ……「うっさい!」……ってぇ」


肘でわき腹をこづく。軽くこづいたのにオ―バ―なんだから。はぁん?と挑発的な笑みを浮かべてきたシャンクスにこちらも負け時と睨み返す。でもそれも数秒もすればすぐに崩れ、互いの口からはクスクスという笑い声が我慢しきれずに漏れていた。


「っはは、あ〜なんかおかしい」
「あぁ、だな」


それから数分間の沈黙があった。なんとなく、本当になんとなく。互いに話しかけることもなく。静かな時間に身を任すようにしてジッとしていた。そうしてふとなんとなく思い浮かんだことを声にする。


「ねぇ、シャンクス?」
「なんだよ〜」

「覚えてる?一年前のこの日のこと」
「……あァ、よ〜く覚えてる。お前の歓迎会をしたんだよなぁ」

「ふふ、うん。歓迎会にかこつけて宴を開いてくれたんだよね」
「ちが!違うだろ〜お前の歓迎会だったってぇの」

「えぇ、だって主賓がもう十分です!って言ったのに、結局6日連続だったんだよ?6日間ずっと夜ご飯お酒だよ?酒!!お腹おかしくなっちゃう!」
「ははっ、でもいい思い出になったろ?」
「……うん、そこは感謝してる」


今日はやけに素直だなぁと呟くように言ったシャンクスは気持ちよさそうに目を閉じて夜風を感じていた。赤髪がサァアアと靡く風によってゆらゆらと揺れている。この空間が心地いい。隣に習うようにして目を閉じ耳を澄ます。後ろの甲板からは相変わらずのどんちゃん騒ぎ。反対に目の前の大海原からは風の音や波の音が聞こえる。そしてすぐ隣からはトントンと靴を鳴らしたり、スンッと鼻をすすったり、やたら落ち着きのない音が終始聞こえてきていた。ほんとこの酔っぱらいは……と思いながらもその音がとても愛らしいものに思えてきて、ゆるゆると口元が緩んでいった。


「なぁに一人で笑ってんだァ?」
「……ちょっと、女性の顔を勝手に見ないでよね」


目を開きおどけるようにしてニシッと笑う。そうしたらシャンクスの目がパッと見開いてなぜか驚いたと瞬いていた。


「ど、どうしたの?」
「もう1年、経ったんだもんなぁ」
「え?」


「いや違う、まだ1年……「お―い、シャンクスさぁ〜ん?」」


「耐えられんのか、俺「シャンクス?」」


「さすがに無理矢理はだめだからな「もう、シャンクス!?」……あ! あぁ、悪い」


「もう、さっきから何言っているのよ?」





シャンクス視点



何って、君の唇を奪うか奪わないかっていう話ですけど?なぁんて、言えるわけないだろ。あぁなんでもねぇよとごまかすようにして笑って返しておく。


「さぁさぁもう夜も遅い、部屋まで送るから」
「ん、ありがと」


ついつい腰に伸びていきそうな手を止める。去年はぐいぐいいけたけれど、今のは去年とは比べものにならないぐらい一気に女らしくなった。その柔肌に少しでも手が触れてしまったら……、抑制がきかないかもしれない。そう思えば思うほど徐々に開いていく距離。それがはがゆかった。はそんなに気にしていないようだが、いずれもっと離れなければならなくなる。そうなったとき、、お前は俺になんて言ってくれるのだろうか。願わくは……、なんて……まだそんな先のこと考えても仕方がないか。


「おやすみ、」
「うん、おやすみなさい。シャンクス」


固く閉ざされた扉に背中を預けて思う。



君が好きだからこそ、触れたくない。好きだからこそ、触れたい。この矛盾はどうしたら解消されるんだろうな。





なぁ、。

(Plan:Christmas)
151210 End.
Afterword


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