しとしとと降り注ぐ真っ白なそれはいつの間にか靴先を被い込んで白く染めた。はぁと吐き出した吐息が真っ白に染まって背景の白と一体になる。そうして暗闇の中へと消えていった。
それにはたと気が付いたとき、は初めて時計を確認した。
「19時……」
はぁ、はぁ、と今度は両手に向かって息を吐き出して、は両手を擦り合わせた。そうして、約束の時間からもう1時間も過ぎていることをようやく理解したのだった。
あの人のことだ、きっとどこかで道に……なんて自分に都合のいいように解釈しながら、はひたすら待った。もちろん、鞄の中にはスマ―トフォンが入っている。でもはそれを使わなかった。今ここで連絡を入れたところであの人はきっと、それを見ないだろう。はそう思っていた。
だからはただじっと、待ち合わせの店の前でじっと、立ったまま待ち続けた。ここへ来たばかりのときには降っていなかった雪が降り出しても、その雪が積もり始めても、それでもは待ち続けた。
「……っ!!!!!」
遠くから聞こえてきたとても小さな音。それは小さくとも確かにの耳に届いて、一瞬にして彼女を笑顔にした。その声が聞こえた瞬間、ははじけるように体を飛び上がらせて、右往左往しながらその声の主を探し回った。ザクッザクッザクッと雪を踏みしめる音が聞こえて、目を凝らすとそこには待ちわびた人がいた。
「お、遅いっ!!!!!」
両手をグッと握りしめて、全身を使って腹の底から声を出して言った。はぁ……はぁ……と息を切らして、何度も何度も謝る彼を目の前にして、「遅い、酷い、寒かった、寂しかった」などとつらつらと言ってみせるけれど、でも正直、彼の姿を目に入れた瞬間からそんなことはどうでもよくなっていた。
寒かった……と言うと、また謝った彼が優しく包み込むようにして抱きしめてくれる。それだけで何もかもを許してしまう。それぐらい、は彼のことが大好きだった。
握りしめられた手を握り返しながら言う。
「ねぇ、大好きだよ」
「あぁ……俺もだ」