気がつけば俺は彼女と共に行く当てもなくフラフラと歩いていた。どこか目的地が決まっているのだろうか? そう思いながらついていく。
「家は近いのか?」
「……いいえ」
「……場所はどこだ?」
聞かされた場所は電車で30分も向こうの町だった。
「おい、駅は向こうだぞ」
コクリ、うなづいた彼女はそれでも駅とは反対の方向へと歩こうとする。その細い腕を掴めば、弱々しい顔がこちらに向いた。
「……帰りたく、ないの」
だから、放っておいて。
……できるわけがない。こんな弱った女を放置できるほど、俺の神経は太くない。
「じゃあどこか別の場所に泊まればいい」
「……お金、持ってきてないの」
は……?
よくよく見てみれば、彼女は鞄も何も持っていなかった。身一つで俺の目の前に立っている。
「……じゃあ、俺の家に来るか?」
自分でも驚いた。どの口がそんなことを言っている?と問いつめたが、もう言葉は彼女に届いてしまっていた。
「……いいの?」
あぁ、と戸惑いながら答える。結構ですと言われるかと思っていた。まるで希望の光を見つけたかのように彼女は嬉しそうに笑った。
それから彼女は無言で俺の後をついてきた。
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