もう会うことはないだろうな。そう思いながらいつも通りの日常を送っていた。
その出会いからしばらくしてのこと。
人混みの向こうに立つ彼女を偶然見つけた。
声をかけようとした。理由なんて分からなかったけど、また話したかった。人混みが晴れると、彼女の隣に男が立っていた。もくもくとタバコの煙が彼女を取り巻いていた。
口にくわえていた自分のタバコを握りつぶした。
遠くから2人の様子を見守った。彼女が男に何か言っていた。男はあまり相手にしていない様子で、彼女は黙った。男が行くと言う。彼女は首を何度も横に振っていた。
もう、会わない……
確かにそう言っていた。男は目を見開いて、彼女を抱き寄せた。その口元は分かってくれと言葉を紡いでいた。彼女は頑なに首を横に振る。
男は愛しているといい、一方的に頬にキスを落とし、その場を去っていった。彼女はその後ろ姿を見送ったあと、しばらくして、その場に崩れ落ちていった。足が自然と前に出た。
ポツ――――
ポツ――――
雨が降り出した。
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