「……なぁ」
顔を上げた彼女は笑っていた。目からは涙が溢れていた。
「もう、耐えられない。あの人を愛している私にも、あの人からの愛にも。こんな苦しい気持ち……耐えられない」
何も返してやることができなかった。ぎゅっと抱きしめた俺は彼女をまた家に連れて帰った。
彼女をソファに座らせる。俺は少し離れたキッチンのイスに座った。
「別れるのか?」
「……うん。あの人はきっと……認めないだろうけど。さっきのが私の精一杯の別れ話」
「愛しているって言っていたぞ、あの男」
「……聞いていたの?」
趣味の悪い人ね、彼女はクスクスと笑う。やっぱり笑顔がいい。そう思った。
「私も……愛しているよ。でも、あの人は……背負っているものがあって。私はそれを支えてあげられそうになかったから」
心の狭い女だよね。笑う彼女は美しかった。
「家は?」
「今日、なくなった」
一緒に住んでいたの。
「住むか?」
「……こ、ここに?」
「ずっとじゃねぇよ。けど、次の住む場所が見つかるまでは貸してやる」
「……へん「何もしねぇから」」
安心しろ、そう言って笑い飛ばせば、ホッとした彼女も笑ってくれた。どうやらこんな俺のことを信用してくれているようだ。
「……しばらくお世話になります」
深々と頭を下げる彼女。俺の口元は嬉しさからか、緩みに緩んでいた。彼女が顔を上げるまでには元に戻さないとと思い、気を引き締める。
「俺はシャンクス。名前は?」
「私は、」
「、よろしくな」
サッと右手を差し出すと、よろしくと嬉しそうな笑顔が返ってきた。この年になって照れるなんて経験、するとは思わなかったよ。そう心の中で呟いた。
奇妙な同居人。
それから俺たちの奇妙な関係が始まった。
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