「はい、完了!」
もう大丈夫だというシャンクスの言葉に女は胸をなで下ろし、体が離れていく。なかなかいい経験をさせてもらえたと笑みを漏らしつつ聞く。
「で、シャンクス。こいつは誰だ?」
「あぁ、同居人だ」
「……は?」
危うくくわえていたたばこを落としそうになった。
そう言うわけで、ベック。今日からこの部屋は禁煙だ。分かったな。笑顔で俺の口からたばこを抜き取った奴は目の前でそれをぐしゃりと潰して見せた。まるで、さっきみたいなことしたら次は許さねぇからなと言われている気がして、ハッと笑ってしまった。
「お嬢さん、お名前は?」
「です」
「年は?」
「えっと、……これでも24歳です」
「……悪い」
見た目がかなり幼く見えたものだったので、ついお嬢さんと呼んでしまったことを詫びる。しかし、どうみても18歳ぐらいにしか見えないだろう。
「シャンクスお前の年は?」
「俺か、34歳だが…」
なんだよ? 首を傾げる奴と彼女を見比べる。つり合っているようなないような微妙な感じだったので、コメントは控えておいた。
「それより、約束はどうなってんだよ」
「……あ、悪い」
「約束って?」
「今日、俺らで「わーー!!」」
「……なんだよ?」
「どうしたんですか、シャンクスさん?」
シャンクスは俺の肩に腕を回しながら、こそこそと話を始める。
「あれ、俺キャンセルするわ」
「は? 冗談きついぜ。お前がいるから女は来るんだぞ」
「……いや、お前が入れば問題はねぇだろう?」
「は? 勘弁しろよ。興味もねぇのに合コンに駆り出される身にもなってみろよ。しかも、お前が来ねぇとなれば、俺が滅多打ちにされるだろうが。そんなのごめんだ!」
「仕方ねぇだろ。俺だって、そん時は行く気まんまんだったぜ。でも、今はそんな気分じゃない!」
「大の大人がわがままいうんじゃねぇ!」
「……あのう」
いつの間にか大声で言い争っていた俺たちの会話は隣にたっていた彼女にだだ漏れだった。
「シャンクスさん、約束していたなら行かないとダメですよ?」
控えめに発せられたその言葉は今のシャンクスにとっては痛恨の一撃だったに違いない。後ろでにやにやと笑いながらその様子を観察する。
「……でも、そうしたら今日の夜、お前は一人だぞ?」
「えっと、別に一人でも大丈夫、ですよ?」
連続ヒットだな。クククッ。シャンクスを見れば、予想通りのしかめっ面だった。
「まぁ、そうだよな」
「よし、話もまとまったようだな。行くぞシャンクス」
あーだ、こーだと言う野郎をせかし、ささっと準備を済まさせる。律儀に玄関までお見送りに来てくれる彼女に目を向けると、視線がバッチリ合った。
「そう言えば、自己紹介ちゃんとしていなかったですね。私はです。あなたのお名前は?」
「俺は、ベン・ベックマン。コイツの会社の同僚だよ」
まぁ、ここに住むならたまに会うだろ。その時はよろしくなと軽く挨拶を済ませる。実はというと、例の合コンの集合時間、30分オーバーという大遅刻をしていた。
「じゃあな、。戸締まりしておけよ」
「はい」
「あと、またG出たら、連絡しろな」
野郎の言葉にの動きがピタリと止まる。
「……はい?」
「あ? だ・か・ら…・・」
ちょ、ちょっと待って下さいと行って、部屋の奥へと戻って行く。数十秒して、すぐに戻ったその手には鞄が握られていた。
「わ、私も出かけます」
「……なんだ、一人でも大丈夫なんだろ?」
俺もいじわるな奴だと自分で思いながら言う。
「Gはちょっと、無理です。なので、今日は友達の家に遊びに行きます」
シャンクスさん。
「なんだ?」
「明日は、土曜日ですし、部屋の掃除しましょう!」
ね? ね? と力強くいう彼女にあ、あぁと返事する赤い髪の男。お前こいつの10歳、年上なんだぞ? 面白くて笑ってしまう。
「それでは、また明日」
そう言って、ひらひらと手を振り走り去っていくを俺とシャンクスはボーッと見ていた。
ブブブブッ ブブブブッ
ポケットで鳴る携帯のバイブ。なんだよと画面を見れば、時刻はすでに40分の遅刻になっていて、数件の不在着信が入っていた。
「やばいぞ、シャンクス。走れ!」
「あ? お、おい!」
会場までダッシュで走るはめになってしまった。
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