ピンポーンというチャイムで玄関へと足を運ぶ。
「あ、ベックだ」
「シャンクスの野郎は?」
「まだ寝てるよ?」
……どこでだ?
「あ、ちょっと!」
私の制止も聞かずに彼は勝手に部屋にヅカヅカと上がる。もう! 何度言っても直してくれない。
「もう、昨日遅かったんだから、寝かせといてあげてよ」
そう言えば、それはどういう意味だと立ち止まるベック。
「どういう意味って、残業が多くて帰るのが遅かったっていう意味だけど?」
「あーなるほど」
小さなリビングには、私が来たばかりにはなかったリクライニングのソファが新たに置かれていた。断固としてベッドはお前が使えと言うシャンクスに、折れた私がせめてとプレゼントしたものだった。
「狭くないか?」
リクライニングソファの寝心地はとてもいいらしい。ただ、結構場所を取っていて、部屋のほとんどを寝具が埋める形となっていた。そこへ大柄のベッグが入ってきて、私もいるのだ。そりゃ狭いはずだ。
「ううん。普段は私とシャンクスだけだし。そんなことないよ?」
「……ならいいが」
「それより、ベックどうしたの?」
「あ、そうだった」
ここに来た用件を思い出したベックがシャンクスの頭をしばいた。
「ちょ、ベック!!」
声を上げても、もう遅かった。
「……いてぇ」
「……いてぇ、じゃない。お前、俺の噂適当に流しやがって!!」
「噂?」
「あぁ、俺が女に飢えているとか、彼女を本気で作ろうと思っているだとか……とにかく、今俺が考えもしていないことを……あ?」
我を忘れて自分の怒りを爆発させていたベックが気を取り戻し、こちらを見たときにはもう、私の肩は震えに震え、笑いは堪えられないものになっていた。
「ふははははっ、何それ! みんなそんな話を信じてるんですか!?」
ケラケラと笑い声を上げれば、しまったと顔をしかめるベック。普段、彼のこういう顔は見られないので、嬉しくて余計に頬が緩んだ。
「あーあれか、悪い」
謝ったし、もういいだろ……寝かせろ……スースーと聞こえる寝息。
「あ、おい!」
「だから言っているじゃないですか、疲れているんですよ」
「……そうか、疲れてるんなら仕方ねぇな。、今から買い物でもどうだ?」
暇だろ?
そう言われれば暇だし。ベックとなら楽しそうだからまぁいいかなと、コクリと頷く。
「……じゃあ行くか」
はいはい、鞄を取ろうとシャンクスの向こうに手を伸ばす。すると、急に起きあがったシャンクスがダメだと腕を掴む。
「なぜだ?」
嫌に真剣なベックの声が部屋に響いた。私はえ? え? え? と二人の顔を何度も見た。いきなりのシリアス展開。いきなりすぎてついていけないんですけど……、一体どこにそんなポイントがあったんですか?
手を引いて腕を放してもらい、体の前で両手を握る。取りあえず見守ることにした。
「ダメだ」
「だからなんでだ?」
「……この前のことは謝る」
「あぁ? それはもういいって言ってんだろ」
「……ベック」
「なぁ、シャンクス。そろそろはっきりさせねぇと、お互いにとってよくねぇぞ」
「……あぁ、分かっている」
ベックに対して、こんな風に話しているシャンクスを見るのは初めてだった。正直、張りつめた空気で息をするのも辛かった。
「帰る」
「え、ベック?」
急いで後を追いかけた。
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