バタン――――
シャンクスが出ていった玄関を見つめる。力なく体は崩れていく。背中を壁に預けるようにしゃがみ込み、膝を抱えるように抱く。
今、この部屋には私一人しかいない。そう理解した途端、押し込めていた思いが溢れ出た。シャンクスがくれたこの時間。今は精一杯考えて、泣いて、答えを探そう。そう思えば思うたび、考えるたびに、私の嗚咽と鳴き声が部屋に響いていった。
ブブブブ―――― ブブブブ――――
画面にはあの人の名前。
名前を見るだけでもドキリとする。
それはまだあの人のことを愛しているということなのだろうか。未だにでないその答えに私はまた手を止めてしまった。
ブブブブ―――― ブブブブ――――
時計を見れば、12時。きっと仕事の昼休みだ。毎回この時間に着信履歴が入っている。毎日だ。まるで、俺のことを忘れるなと言ってくれているようで、一緒に住んでいた時はそんなこともしてくれなかったのに、なんで、今……と抱えた膝を引き寄せた。
ピッ――――
それは自分でも驚くくらい自然なことで、
「はい、もしもし」
「か?」
「はい」
「移動が決まった」
「……い、どう?」
「引っ越す」
「どこへ?」
聞いた場所は私たちが住んでいたところから何時間も新幹線で行った先だった。
「……」
「おまえも来い」
「……なんで?」
「なんでって……」
「荷物はもう業者に頼んで送ってもらっている」
会っただろう?
その一言で理解する。あぁ、この人、私が家に帰ってきていないことに気が付いていないんだ。そう言えば、仕事柄、彼の出勤時間は不規則で、唯一、昼休みだけは固定だったなと思う。1週間まるまる顔を合わせないなんてことざらにあった。それだけあの人は彼女のあの事件に熱を入れているということ。
ふぅ。やめよ、やめやめ。そのことは考えないって決めたでしょ。
「う、ん。そっか……」
「今日出る。夕方16時、いつもの駅のいつもの看板の前で待ってる」
「あ、ちょ!」
プツン――
いつのものことながら、あの人は突然で、そして、勝手だ。知ってたよ、そんなことぐらい。だって、そこも含めて……愛して、いたんだから……。
何にせよ、行かないかぎり、彼は待ち続けてしまう。
「行くしか、ない……か」
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